東京の探偵 失敗談
今日は敢えて、東京の中心街の調査での失敗を書いてみます。探偵も人間ですので、全てが完璧では有りませんので、成功事例ばかり書いていても、それは少しリアリティーが有りませんし、これから探偵に依頼しようと思っている方々にもチョットした事が大事に至ることを知って頂くためにも敢えて、書きます。
もう7~8年前になりますか・・・。調査現場は東京中央区の大手企業本社などが乱立するオフィス街の一角、某自社ビル。
先ず、我々探偵が調査をする手順としては、初めての現場では1時間程度、早めの時間に到着するようにします。その会社の出入り口等をつぶさに確認探査し、ビデオで撮る。何故、確たる証拠にもならないところを撮るかと云うと。時間課金の調査の場合に依頼者さんに、確かにこの時間に到着して作業が始まっていますといったことを納得して頂く為でもあります。
そう云った探偵の基本作業を終え、少しでも対象者が出て来そうな場所があれば、全てが確認出来る様に調査員を配置。仮に出入り口が二ヶ所同時に見える場所が確保出来れば、その一ヶ所に陣取り調査員の配置をします。
それぞれの案件内容にもよりますが、人数が多ければ多い程、調査の難易度は下がりますが。逆に下手に多すぎても目だってしまい怪しまれる現場も有ります。ですので、張り込みの人員は出入り口がひとつで、見渡しが良いところであれば。他の調査員は関係者の目が届かない場所で待機させて、時に交代しながら張り込みをします。
これが、概ね東京の大きなオフィス街での調査に備える、準備運動とでも申しましょうか、探偵の一般的セオリーです。
ところが、その作業が終わって直ぐに、そのビルの従業員専用夜間出入り口からいきなり対象者が出てきて、周りをきょろきょろと見渡す。定時でも無く鞄を持っているでも無く・・。我々はその時点で、対象者からは確認出来ないが、こちらからはハッキリと見える絶好の場所を見つけて、張り込みを始めたばかりだったので、その対象者の様子や目の動きまでもシッカリと確認出来ていました。こういったことは基本そんなに珍しいことでは無いのですが・・。
「ん….。対象何してるんでしょう・・」と、1人の探偵が口にする。
「だね・・。会社の客が道が分からないとか?待ち合わせかな?」
ともう1人の探偵がそれに答える様に言う。確かに、わりと珍しい光景ではあるが、写真以外の実物の対象を確認できたので、むしろ、本番での尾行がいくぶん楽になる。しかし、対象はビルの角まで来ては周りをつぶさに見ている様子。そしてまた、戻ったりしながら、周囲を見ながら携帯電話で(当時はガラケー)誰かに電話をしている様子が伺える。
この調査を担当する調査主任探偵がインカムで、別働隊に「対象がウロウロしているから少し離れた場所に移動して」と通電。直ぐに「了解です」とだけ返事があった。(基本インカムでの会話は短いのが原則)
そこで、少々事の真意を読み間違った1人の探偵が「やっぱり誰かお客さんが道に迷ってるのを探しているのかもね」と、想像した。
その後、一旦会社に戻った対象が20分程してまた出て来た。今度は会社の以前にも増して周りを入念に見て周っている様子。探偵達は自分達の張り込み場所を確認されるのを避ける為、1人の女性調査員を残して一度その場を離れることにした。
現場に残っていた、女性調査員曰く。
「あのままズッとウロウロして居て、一度会社に戻ったけれど直ぐに出て来て同じ行動です」とのこと。
幸い、対象者に調査員を確認されることはなかったが、初見の調査だった為。その班の調査主任の判断で「これは普通じゃない」と、依頼者に相談し取り敢えずこの日は一旦、調査を中断することに。
その翌日。依頼者から連絡が有り。「スミマセン!夫婦共有で使っているPCで探偵事務所のホームページを何軒も検索した履歴を見られてしまった様です」とのこと。弊社は契約時に必ず「調査契約書やそれらしいものは見つからない様に保管しておいて下さいね」と、告げるのですが・・・。思い返すとその契約終了後、それを言い忘れて居たのです。後日談では有りますが、その依頼者さんはけっこうな楽観主義的な方だったそうで・・。
稀に言い忘れることは有りますが、過去契約書を対象者に見つかったことが1度だけしかなかった為、相談員の心の緩みが出たミスでした。結果、2ヶ月冷まして、無事調査は完結しましたが。あのまま調査主任の判断が無ければ危ういところでした。
我々、探偵はこれが生業ですのでこう言った基本を忘れないことを肝に銘じた案件でした。
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